青年等就農計画の書き方|認定新規就農者になるための事業計画書作成ガイド
著者: 田んぼ電卓編集部
はじめに
認定新規就農者になるには、**「青年等就農計画」**を作成して市町村に提出する必要があります。
この計画は、あなたが今後5年間でどのような農業経営を目指すかを示す事業計画書です。経営開始資金(年間最大165万円)や青年等就農資金(無利子融資)など、主要な支援制度を利用するための入り口となる重要な書類です。
この記事では、農林水産省の公式様式と記入イメージをもとに、各項目の書き方とポイントを解説します。
青年等就農計画とは
計画の位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 青年等就農計画認定申請書 |
| 根拠法 | 農業経営基盤強化促進法 第14条の4第1項 |
| 提出先 | 就農する市町村 |
| 計画期間 | 5年間(経営開始後おおむね5年後の目標を記載) |
| 認定要件 | 市町村の基本構想に照らし適切で、達成見込みが確実であること |
申請前に必ず相談を
農水省は「申請様式の作成前に、都道府県(普及指導センター)や市町村に必ずご相談下さい」と明記しています。
相談先:
- 市町村の農業担当窓口
- 都道府県の普及指導センター
- 新規就農相談センター
事前相談で、その市町村の基本構想(目指すべき農業経営の指標)を確認できます。計画がこの基本構想に沿っていないと認定されません。
記載項目の一覧と書き方
1. 基本情報
| 記入欄 | 記入内容 |
|---|---|
| 申請者住所・氏名 | 申請者の住所、氏名、生年月日。法人の場合は法人名と代表者名 |
| 就農地 | 就農する市町村名。予定の場合は「○○市(予定)」と記載 |
| 農業経営開始日 | 農業経営を開始した(する予定の)年月日 |
夫婦で共同申請する場合は、申請者欄に全員の氏名を連記し、家族経営協定等の写しを添付します。
2. 就農形態
3つの就農形態から該当するものを選びます。
| 就農形態 | 説明 |
|---|---|
| 新たに農業経営を開始 | 親が農業を行っていない方が新規に開始する場合 |
| 親の農業経営とは別に新たな部門を開始 | 親の農業とは別の作物・部門で新たに開始する場合 |
| 親の農業経営を継承 | 親の経営の全部または一部を引き継ぐ場合 |
親の経営を継承する場合は、継承前に親の経営に従事していた期間も記載します。
3. 目標とする営農類型
以下の類型から選択します。
単一経営(販売金額1位の部門が総販売金額の80%以上):
水稲、麦類、雑穀、いも類、豆類、工芸農作物、露地野菜、施設野菜、露地果樹、施設果樹、露地花き・花木、施設花き・花木、乳用牛、肉用牛、養豚、養鶏
複合経営(1位が水稲で80%未満):
水稲+(上記16類型のいずれか)
該当する類型がない場合は「その他(○○)」と記載します。
→ 作物診断クイズで自分に合った作物を見つける
4. 将来の農業経営の構想
経営開始後おおむね5年後の経営の概要を記載します。
記入例:
農業技術の向上、機械化、規模拡大等によりタマネギ、カンショの複数の作目を組み合わせた経営で地域の認定農業者の8割程度の所得水準を目指す。
ポイント:
- 具体的な作物名を挙げる
- 目指す所得水準を示す
- 技術向上・規模拡大など成長の方向性を書く
5. 年間農業所得と労働時間の目標
現状と5年後の目標を数字で示します。
| 指標 | 現状(1年目見込み) | 目標(5年後) |
|---|---|---|
| 年間農業所得 | 2,000千円 | 4,000千円 |
| 年間労働時間 | 2,000時間 | 1,800時間 |
注意:
- 「現状」は初年度の場合、1年間の見込みを記載
- すでに経営開始済みの場合は前年の実績を記載
- 目標は市町村の基本構想の指標を意識して設定
→ 田んぼ電卓のシミュレーターで年間所得を算出できます
6. 農業経営の規模に関する目標
作付面積・生産量
作物ごとに現状と目標を記載します。
| 作物 | 現状 面積 | 現状 生産量 | 目標 面積 | 目標 生産量 |
|---|---|---|---|---|
| タマネギ | 40a | 15,600kg | 80a | 31,200kg |
| カンショ | 0a | 0kg | 20a | 3,800kg |
| 合計 | 40a | — | 120a | — |
農地の所有・借入
| 区分 | 地目 | 所在地 | 現状 | 目標 |
|---|---|---|---|---|
| 所有地 | 畑 | ○○市△地区 | 20a | 40a |
| 借入地 | 畑 | ○○市△地区 | 20a | 80a |
→ 作物別の収量・単価データを参考に
7. 生産方式に関する目標(機械・施設)
所有する(予定の)機械・施設を記載します。
| 機械・施設 | 現状 | 目標 |
|---|---|---|
| トラクター | 26馬力 1台 | 26馬力 1台 |
| 管理機 | — | 1台 |
リース・レンタル・共同利用の場合はその旨を記載します。
8. 経営管理に関する目標
経営管理の方針を記載します。
記入例:
青色申告の実施、PC活用による経理
他にも:
- 複式簿記の導入
- 経営内の役割分担
- 販売先の多角化 など
9. 農業従事の態様等に関する目標
労働環境の目標を記載します。
記入例:
月に○日程度を休日とする
他にも:
- ヘルパー制度の活用
- 家族経営協定に基づく役割分担 など
10. 目標達成に必要な措置(資金計画)
目標を達成するために必要な設備投資と資金の調達方法を記載します。
| 事業内容 | 規模・構造 | 実施時期 | 事業費 | 資金名 |
|---|---|---|---|---|
| トラクター導入 | 26馬力 1台 | ○年○月 | 3,500千円 | 青年等就農資金 |
| 管理機導入 | 1台 | ○年○月 | 600千円 | 青年等就農資金 |
→ ローン返済シミュレーターで返済計画を確認 → 農業の初期投資ガイド
11. 農業経営の構成(家族・雇用)
経営に携わる方の情報を記載します。
| 氏名 | 年齢 | 続柄 | 担当 | 現状 従事日数 | 目標 従事日数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 農林 太郎 | 39 | 代表者 | 全般 | 250日 | 225日 |
| 農林 花子 | 36 | 妻 | 農作業補助、経理 | 250日 | 225日 |
注意: 年間農業従事日数は1日8時間として計算します。毎日1時間ずつ働いた場合は8日で1日と換算します。
雇用の見通しも記載:
| 区分 | 現状 | 見通し |
|---|---|---|
| 常時雇(年間) | 0人 | 0人 |
| 臨時雇(年間) | 0人 | 5人(延べ75人) |
12. 技術・知識の習得状況(参考)
過去の研修経歴を記載します。
| 項目 | 内容例 |
|---|---|
| 研修先 | ○○県農業大学校 |
| 専攻 | 野菜栽培 |
| 期間 | ○○年○月〜○○年○月 |
| 研修内容 | 野菜栽培技術の実習、農業簿記等の経営管理講義 |
| 活用した補助金 | 就農準備資金、○○県農業研修事業 |
研修カリキュラム等の添付が必要です。
審査で重視されるポイント
数字の根拠が明確であること
**「なぜその面積で、その所得が見込めるのか」**を審査官が理解できる計画にしましょう。
- 作物の単収(10aあたり収量)は地域の平均値を参考に
- 販売単価は市場価格やJAの出荷実績をもとに
- 経費は研修先の実績や地域の相場を参考に
→ 田んぼ電卓のシミュレーターなら、農水省の統計データに基づいた収量・単価・経費を自動計算。計画書の数字の裏付けとして活用できます。
段階的な成長プランを示すこと
1年目からいきなり高い所得目標を掲げるのではなく、段階的に面積を拡大し、技術を向上させて所得を増やしていくストーリーが重要です。
市町村の基本構想に沿っていること
各市町村は「基本構想」で目標とすべき農業経営の指標を定めています。計画の所得目標や経営規模がこの指標からかけ離れていると認定されません。事前相談で必ず確認しましょう。
リスク対策を意識すること
自然災害、価格変動、病害虫などのリスクに対する備え(農業保険の加入、複数品目の栽培など)を計画に含めると評価が高まります。
審査で落ちるパターンと対策
パターン1: 数字に根拠がない
問題: 所得目標が高すぎる、または面積と生産量の関係が非現実的
対策: 地域の平均的な単収・単価をもとに計算。田んぼ電卓でシミュレーションして根拠を示す
パターン2: 基本構想との不整合
問題: 市町村が想定していない作物や、基本構想の指標とかけ離れた目標
対策: 事前に市町村の農政担当に相談し、基本構想の内容を確認
パターン3: 農地確保の見通しが立っていない
問題: 目標面積の農地をどう確保するかが不明確
対策: 農地バンク(農地中間管理機構)の活用や、地域の農業委員会への相談を計画に明記
パターン4: 技術・経験が不足
問題: 研修経歴がなく、計画の実現可能性に疑問がある
対策: 就農前に研修を受ける。就農準備資金(年間最大150万円)を活用して研修期間を確保
田んぼ電卓を活用した計画書の作り方
青年等就農計画で最も重要なのは数字の説得力です。田んぼ電卓のシミュレーターを使えば、計画書に必要な数字を簡単に算出できます。
ステップ1: 作物と面積を入力
シミュレーターで作物を選び、経営面積を入力します。12種類の作物に対応しています。
ステップ2: 収支結果を確認
年間の売上・経費・所得が自動計算されます。これが計画書の「年間農業所得」の根拠になります。
ステップ3: 複合経営をシミュレーション
複数の作物を組み合わせる場合は、複合経営シミュレーションで合計の収支を確認できます。
ステップ4: 事業計画書をPDF出力
シミュレーション結果をPDF出力して、計画書の添付資料として活用できます。
ステップ5: ローン返済計画を作成
機械・施設の導入に融資を利用する場合は、ローン返済シミュレーターで月々の返済額を計算します。
まとめ
青年等就農計画は、認定新規就農者になるための最も重要な書類です。
書き方のポイント:
- 事前相談を必ず行う(市町村、普及指導センター)
- 数字に根拠を持たせる(シミュレーターの活用)
- 段階的な成長プランを示す
- 市町村の基本構想に沿った目標設定
- リスク対策を意識する
計画書の数字づくりには、田んぼ電卓のシミュレーターをぜひ活用してください。
→ 認定新規就農者制度の解説 → 収支シミュレーションを試す → 補助金・支援制度の一覧 → 就農準備チェックリスト → 作物診断クイズ